立ち読みコーナー
子どものための エゴグラム・ロールレタリング実践法 |
≪「あとがき」≫より抜粋 |
筆者がエゴグラムやロールレタリングに出会って12年がたちました。それまでは、特別 に心理学の勉強をしてきたわけではありません。ロールレタリングの創始者、西九州大学名誉教授の春口徳雄先生の講演をお聴きする機会があり、自己を深く見 つめダイナミックに自己変容を遂げていくという内容に感銘を受けたのがそもそものきっかけでした。先生の著書を夢中になって一晩で読み、ついには、春口先 生の下を訪ね、教えを請うことになったのです。講演中に春口先生が紹介されたエゴグラムにも非常に興味を覚え、交流分析の第一人者である福岡県立大学名誉 教授の杉田峰康先生の著書をすべて読みました。その後、見よう見まねでエゴグラムやロールレタリングを教育の現場に取り入れ、実践を始めました。
実践を進めていく中で、子どもたちが心のホメオスタシス機能を回復させ、自分の力で、より良い方向へと成長していく姿を目の 当たりにし、大変驚かされました。いじめを克服していった生徒、保健室登校から教室復帰をしていった生徒、繰り返す家出から立ち直っていった生徒…。心の 自己治癒力を働かせ、自己実現を果たすことができた数多くの生徒たちに立ち会うことができたのは、教師としてこの上ない喜びでした。 エゴグラムやロールレタリングは交流分析の理論に基づいています。交流分析は「過去と他人は変えられない」とし、自分を知 り、自分を変える方法を重視します。過去は変えることはできませんが、過去に対する認知(考え方)を変えることはできます。他者に自分への対応の変容を期 待することは容易ではありませんが、自分の認知を変えることで、結果的に自分の環境としての他者は変わっていくのです。つまり、さまざまな交流を通して、 自分への「気づき」ができるようになり、他者への「気づき」が深まっていくのです。人は自分を知ると変化し、成長することができます。 本書によって、一人でも多くの子どもたちがさまざまな「気づき」から自己実現を図り、心身ともに豊かな社会を形成する担い手となってくれることを願って います。 |
目次
編集者からの裏話
『子どものためのエゴグラム・ロールレタリング実践法』 |
本書では、信頼性の高い心理テスト「エゴグラム」と専門的な知識を必要とせず、だれでも簡単に取り組める心理技法「ロールレタリング」の教育現場での活用方法を紹介しています。 「エゴグラム」は自分の今の心の状態を知ることができる心理テストです。子どもたちはもちろん、先生方も楽しみながら、わかりやすいグラフで自分の性格傾向を知ることができます。 「ロールレタリング」は自分から相手に手紙を書き、次に相手の立場になって自分自身に手紙を書くことで、自分の感情に気づき、相手の気持ちや立場を思いやることができるようになります。わかっているようで、なかなかわからないのが自分自身なのかもしれません。自分の長所や短所を知った上で行動することで、周囲へのかかわり方も変わって いき、その結果、対人関係も良好になっていくことが期待できます。さまざまな悩みを抱える子どもたちは、周囲はおろか自分自身も見失いがちです。エゴグラ ムやロールレタリングで自分自身を知ることで、より良い人間関係を築き、子どもたちの成長を助けるツールとなればと、本書を企画しました。エゴグラムやロールレタリングをいち早く教育現場に取り入れ、数多くの実践を重ね、さまざまな成果を得られている著者の岡本泰弘先生に、これまでの実践を活かし、教育現場ですぐに活用できるように執筆していただきました。 特別な知識や道具を必要としない「エゴグラム」と「ロールレタリング」を、本書を通して多くの先生方に知っていただき、悩みを抱える子どもたちのメンタルヘルスの促進に役立てていただければ幸いです。 |